介護コラム
介護職員の離職率は高い?退職理由や他業界との比較を紹介
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介護職員とは、自分で生活を送るのが難しい人の入浴や排せつなどの介護、生活支援を行う職業のことです。介護職員に対して、仕事がきつい、給料が安い、やめる人が多い、などのイメージを持たれている方は少なくないでしょう。
では、介護職員とは本当にそのようなイメージの職業でしょうか。ここでは介護職員の離職率や退職理由を見ながら、転職先としての介護職員の将来性について解説しますので役立ててください。
介護職員の離職率はどれくらい?
介護職員の離職率は高そうに思われていますが、実際はどうなのでしょうか。公益財団法人介護労働安定センターが2020年度に行った「介護労働実態調査」では、訪問介護、サービス提供責任者、介護職員の3職種における2019年10月1日から2020年9月30日まで1年間の離職率は14.9%となっています。この場合の離職率は、2019年9月30日の在籍者数に対する1年間の離職者の比率(%)です。
この数字を他の職業と比べてみましょう。厚生労働省の2020年雇用労働調査結果では、2020年の1年間の常用労働者の離職率は14.2%となっています。この場合の常用労働者は期間の定めがない雇用者、または1か月以上の期間を定められている雇用者をいいます。
例えば宿泊業・飲食サービス業は26.9%、生活関連サービス業・娯楽業は18.2%です。したがって介護職員の離職率は低いことがわかります。
この2つの調査の対象者が同じとはいえないものの、介護職員の離職率は必ずしも高くはないでしょう。介護労働安定センターの毎年度の調査では、2010年度の離職率は17.8%なので、2020年度の14.9%はそれから2.9ポイントも改善しています。2020年度の離職率は、最近10年間の推移では、最も低くなっています。
参考:令和2年度介護労働実態調査事業所における介護労働実態調査結果報告書|公益財団法人介護労働安定センター
参考:令和2年雇用動向調査結果の概要 用語の定義|厚生労働省
なぜ離職率が高いイメージがあるのか
先述の通り、介護職員の離職率は必ずしも高くはありません。では、なぜ介護職員の離職率が高いと思われているのでしょうか。ここでは、その理由について解説します。
人間関係に苦労しそう
理由の一つは、人間関係が難しそうと考える人が多いためのようです。介護の仕事は、利用者の方が安全で快適に過ごせるようにスタッフだけでなく、医療職の方や利用者の家族の方など、さまざまな人とのコミュニケーションが大切です。
一方で、介護の仕事に就いている人は、職歴も年齢も異なり考え方も違うため、トラブルが生じることもあります。また利用者のなかには職員にきつく当たる方もいます。介護職員は利用者との距離が近いだけに対応が難しい面がありますが、利用者に寄り添う姿勢が大事な仕事です。
施設の運営方針に不満が溜まりそう
理由の二つ目は、施設の運営方針に対して介護職員が不満を抱えやすいと考えられていることです。
介護サービスでは利用者の一人ひとりにあった丁寧なサービスを提供しなければなりません。一方、施設運営者は施設全体の効率も考える必要があります。
このため、丁寧なサービスを求める利用者や家族の方と、効率を重視する施設運用者の間で板挟みになり不満が溜まることもあるかもしれません。介護職員は相手の生活に関わる範囲やプライバシーに触れる機会が多い職業であるために、介護職員が利用者のことを考えてサービスを提供しようとすると施設の運営方針に沿わず、不満を持つケースが考えられます。
他の職業よりも給料が低そう
さまざまなメディアで介護業界の課題を取り上げられる事は多く、その中で給料が安いという事はよく聞かれます。
そのため給料が低いために離職率が高い、というイメージもあるようです。
実際の介護職員の給与はどうでしょうか。
厚生労働省の2020年度の介護従事者処遇状況等の調査結果では、常勤の介護職員の平均給与は315,850円(2019年度は300,120円)です。
一方で一般労働者の賃金は、307,700円(2019年度)です。2019年度で比較すると7,000円ほど介護職員が下回っていますが、2020年度では2019年度の一般労働者の賃金を上回っています。
介護職員の給与は、実は年々改善されています。例えば、2014年度の一般労働者賃金に対し介護職員では22,000円も低かったものの、2019年度では7,000円に縮まっている状況です。これは国が特定処遇改善加算などで給与を上げる政策を行っているためです。
参考:令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要|厚生労働省
3Kでしんどそう
介護の仕事は3K(きつい、汚い、危険)のイメージを持つ人もいます。確かに介護業界では、利用者の方を車いすに移乗させるために腰を痛めるケースや、夜勤の業務が続いて体調を崩す場合があります。また、排せつ介助などの仕事を汚いと感じる方もいるかもしれません。
3Kに対するイメージは、一般的な仕事よりも体力勝負であったり、場合によっては仕事を続けられなくなる、というものがあります。そこから介護の仕事も離職率が高いというイメージに繋がりがちなのです。
実際の退職理由は?
では、実際に介護職員を辞める理由にはどのようなものがあるでしょうか。以下では、(公財)介護労働安定センター「平成29年度(2017年度)介護労働実態調査」の結果をもとに説明します。
人間関係に問題があった
介護の仕事を辞めた理由で最も多かったのは、「職場の人間関係に問題があったため」で、20%を占めます。介護職員の場合、職員同士の協力は欠かせないうえ、苦手な人ともコミュニケーションをとりながら業務を進める必要があります。また、スタッフだけ出なく、利用者との相性の問題もあるでしょう。
どうしても人間関係がうまくいかない場合の対処法としては、人間関係を一から築けるオープニング施設やスタッフの多い大規模施設、マイペースで仕事ができる訪問介護などでの仕事がおすすめです。
ライフイベントの影響
介護職員の離職理由で2番目に多いのが、「結婚・出産・妊婦・育児のため」で18.3%です。介護職員は、女性が多い職場ですが、女性の場合、結婚や出産、育児などライフイベントの影響を受けやすいといえます。
しかし介護業界は慢性的な人手不足もあり、産休や育休、介護休暇、シフトの変更などが取りづらく、結局、仕事と家庭の両立ができずに離職する場合が少なくありません。
もしも出産や育児を続けながら介護職員を続けたい場合は、結婚や出産後も介護職員が続けられる施設を探すしかありません。産休や育休の取得率の高い施設や、ママさん介護士の在籍が多い施設を選ぶとよいでしょう。
運営に不満があった
同調査では介護職員を退職した理由として「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」と答える方が17.8%いました。(。人手不足もあり介護職員のなかには、運営面の改善を求めても対応してくれない経営者や上司に対して不満を感じ、転職する方もいます。
施設側が積極的に介護職員と面談したりミーティングをしたり、あるいは人材育成や教育に力を入れていくことが改善や人材の定着につながりますが、日々の業務に忙しく、なかなか改善できないケースもめずらしくありません。
これから介護職員になろうと考えている方は、施設の運営者と介護職員とのコミュニケーションに力を入れている事業所や、あるいは小規模でアットホーム的な施設を探すとよいでしょう。
将来の見込みが立たなかった
将来のキャリアアップを考えて、介護職員を退職した方も多いようです。特に男性に多く見られる退職理由です。
介護職員としての仕事自体には満足していてもなかなか昇給しなかったり、管理職に就けなかったりすると自分のキャリアに不安を感じて転職を決めるケースはめずらしくありません。
とはいえ、キャリアアップの道筋がある事業所も増えています。介護職員への転職を考えている場合は、研修制度や資格取得制度が整った事業所を探すとよいでしょう。
他に良い職場を見つけた
離職理由では、「他に良い仕事・職場があったため」が16.3%、「自分の将来の見込みが立たなかったため」が15.6%と高くなっています。介護の仕事は、より良い条件の職場や将来が見込める職場を求めて転職する人が他の業界よりも多いのが特徴です。
2021年8月の有効求人倍率で見ると、全職業が1.03なのに対して、介護サービスは3.63と非常に高くなっています。特に経験者であればすぐに来てほしいという事業所は多く、今より良い職場を望む人にとっては、転職しやすい業界といえます。
給料に満足できなかった
「収入が少なかったため」も離職理由では多く15.0%ほどです。給与面の改善には国も力を入れていて、年々改善が進んでいます。
しかし男性の場合は、家族を養うために昇給や管理職がある業種へ転職する人が多くなります。介護労働安定センターの2019年度の調査では、男女別に介護の仕事を辞めた理由をまとめていますが、「収入が少なかったため」は男性が20.8%、女性が14.1%と男性が多いのが特徴です。
給料に満足できない場合、評価制度や定期的な昇給がある事業所がおすすめです。
参考:職業別一般職業紹介状況〔実数〕(常用(含パート))(令和3年8月分)|厚生労働省
介護職員に転職しても大丈夫?
少子高齢化による人材不足が問題のなか、介護に対するニーズが高まり、介護職員の有効求人倍率は上がっています。なかでも経験者へのニーズは高く、需要はあるといえるでしょう。未経験者の場合は、まず経験を積むところから出発し、介護職員がわかってきた段階でより自分に合った職場を探すことが大事です。
ただし長く働ける環境を求めているなら、自分にあった職場を見極めましょう。例えば頻繁に求人募集をしている事業所は、職員が定着していないことを示しています。求人情報サイトをしっかりチェックするとともに、実際に施設や事業所を見学して、待遇面だけではなく職場環境などもよく見て慎重に検討しましょう。
まとめ
介護職員はやめる人が多いイメージがありますが、決して離職率が高いわけではありません。かつては他の業界に比べて、給料が安いなどのイメージもありましたが、国が待遇改善に取り組み、かなり改善され平均的な水準になりつつあります。
高齢化社会が進展するなかで、介護職員へのニーズが強まり求人倍率が他の業界よりも高いのが特徴です。したがって、人手不足で給与面を強調した求人も増えています。転職の際は職場環境などをよく知ったうえで自分にあった、長く勤められる職場かどうかを見極めましょう。
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