第34回介護福祉士国家試験より、介護福祉士国家試験の受験料が前年度から3,080円増の1万8,380円に引き上げられました。

受験料増額の理由としては、新型コロナウイルスの感染拡大防止対策にかかる試験運営の支出が増えるためです。

感染対策を講ずることは大切なことですが、公益社団法人日本介護福祉士養成施設協会や公益社団法人日本介護福祉士会は、この受験料の引き上げについて、受験忌避や学生の学習意欲の低下につながると指摘しています。

今回の記事では、介護福祉国試の受験料増額の概要や、増額が及ぼす影響について解説します。

※出典：介護福祉士国家試験受験手数料の値上げに関する意見（公益社団法人日本介護福祉士養成施設協会 ）

http://kaiyokyo.net/news/20210721_opinion.pdf

※出典：受験手数料引き上げに関するパブコメへの意見提出について ‐ 日本介護福祉士会

https://www.jaccw.or.jp/topics/1793

第34回介護福祉士国家試験から受験手数料が1万8,380円に引き上げ

※2021年8月10日現在

2021年8月、政府は介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士の国家試験について、受験手数料を引き上げることを決定しました。

介護福祉士（一般受験者）の受験手数料は、現行の1万5,300円から1万8,380円に変更され、その差額は+3,080円となっています。

受験料引き上げは、第34回介護福祉士国家試験（受験書類受付期間2021年8月18日〜9月17日）より適用されます。［注1］

［注1］第34回介護福祉士国家試験の施行について｜厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_20116.html

受験料引き上げの理由は新型コロナウイルスの大流行

厚生労働省は、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士の受験料引き上げの理由について、新型コロナウイルスの大流行を挙げています。

新型コロナウイルス対策のための、試験会場の増設や誘導スタッフの増員ほか、パーテーションなどの備品整備といった感染拡大を防止するための準備で、試験運営にかかる経費が例年よりも増えることを理由に挙げています。

公益社団法人日本介護福祉士養成施設協会は、今回の受験料引き上げとその理由に関して、感染拡大防止のために対策や準備が必要なことについて理解を示しつつも、受験料を現在の1万5,300円から3,080円も引き上げることにについて「増額することに納得できるよう、具体的な経費の提示をしてほしい」という意見を述べています。

介護祉士国家試験の受験料増は受験者数の減少につながる可能性がある

厚生労働省は2021年7月22日まで、受験料引き上げについてパブリックコメントの意見募集を実施していました。

日本介護福祉士養成施設協会は、「介護福祉士国家試験受験手数料の値上げに関する意見」として、厚生労働省に意見書を提出しています。

意見書のなかには、受験料の引き上げが及ぼす影響について、「受験忌避につながるのではないか」と指摘しています。

経済的に困窮し、奨学金等で受験料を賄っている外国人留学生にとって、受験料の増額は新たな経済的負担となります。

経済的な負担を避けるために、受験を諦める外国人留学生が出てくる可能性があるということです。

日本介護福祉士養成施設協会は、経済困窮者への対応策として、経済困窮者に対して受験料の据え置きや、受験料などの減免といった支援を導入すること求めています。

また、国家試験の受験手数料は、実施のたびに増減することについて、国家試験制度の安定性や信頼性だけでなく、受験する学生間の公平性にも影響を及ぼすのではないか、といった意見も述べています。

介護福祉国家試験の受験料引き上げについては、公益社団法人日本介護福祉士会も公式サイトで次のような見解を表明しています。

・実務経験ルートの希望している人が受験を先延ばしにしたり、養成施設を卒業した人が「受験しない」という選択をする恐れがある

・受験料の引き上げは受験者数の減少だけでなく、養成施設等に通う学生達の学習意欲の低下につながる可能性がある

高齢化社会の日本において、介護現場の人材不足は深刻な問題となっています。

受験料引き上げが原因で受験者数が減少してしまえば、将来的な介護職員の人員確保や、介護職リーダーの育成にも大きな影響を与えるでしょう。

受験忌避や学習意欲の低下を防ぐには資金確保による安定的な国試の実施が求められる

介護福祉士国家試験の受験料が現在の1万5,300円から3,080円も増額されることが決定したことで、将来介護現場で働くことを希望している外国人留学生や養護学校等で学ぶ学生たちにとって、大きな影響を与えることが懸念されています。

受験料を奨学金等で賄う経済困窮者は受験を先延ばし、または受験そのものを諦めてしまう恐れがあり、ひいては学習意欲の低下につながる可能性もあります。

そういった問題を防ぐためにも、新型コロナウイルスの大流行のような不測の事態に対応できるよう、ある程度の財源を確保し、安定的な国家試験の実施ができるよう体制を構築する必要があるでしょう。