介護コラム
認定看護師、医者、介護助手、介護福祉士の連携による働き方改革
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人命というかけがえのないものを背負う医療・介護業界では、「今日は8時間働いたから仕事を切り上げよう」と簡単に仕事を区切るのが難しい状況にあります。しかし、医療従事者や介護業界のスタッフも当然人間なので、不当な労働環境をよしとしてしまうと医療や介護サービスの品質低下が起こってしまいます。
同じ業界内でも、施設によって実際の労働環境や労働条件はさまざまです。制度の改革によって、今後ますます働きやすい職場とそうでない職場はわかれていくでしょう。
今回は、より働きやすい環境をお探しの方に向けて、認定看護師、医者、介護助手、介護福祉士の連携による働き方改革の内容を紹介します。
認定看護師・医者・介護助手・介護福祉士の連携で介護医療院が実現
認定看護師、医者、介護助手、介護福祉士の連携を深め、高齢化社会に対応するために新しく制度化されたのが、介護医療院という施設です。
介護医療院は介護療養型医療施設にかわる医療重視の介護施設
介護医療院とは、医療面のアプローチと介護の両方を必要としている高齢者に対して、
・専門家による体調の管理や医療処置
・介護士などによる日常的な介護
・生活機能を保護・回復するためのリハビリ
・ターミナルケア
などを提供する施設となっています。もともと、高齢者向けの施設は、
・要介護1~5の高齢者を対象に幅広く介護を提供する特別養護老人ホーム
・要介護者にリハビリや日常ケアを提供する介護老人保健施設
・高度な医療処置を施すことのできる介護療養型医療施設
などがありました。しかし、2017年に介護療養型医療施設が制度上廃止されることになったため、それにかわる新しい介護・医療施設として介護医療院が新設されています。なお、既存の介護療養型医療施設は、2024年までに順次介護医療院へと変更していく予定です。
介護施設としては特別養護老人ホームなどの入居型施設に人気が集まっていますが、高度な医療処置やターミナルケアに関しては、医療機関でなければ対応できません。介護施設も体調の急変などに備えて近隣の病院と連携を取っていますが、要介護者を分散させるリスクなどを考えて、施設の種別が変更された形です。
後期高齢者支援や、重篤な要介護者の介護に興味がある場合は、介護医療院への転職を検討するとよいでしょう。
現状名称の変更以外に大きな変化はない
新しく始まった介護医療院にもいくつかの問題点があります。最大の問題は、財源です。基本的に、介護施設としての基準や財源は、介護療養型医療施設のものを引き継いでいます。今後、時代が進むにつれて介護保険の利用者が増えていけば、財源を担当する市町村の予算が尽きてしまうケースも出てくるでしょう。
ただし、医療にも介護にも対応できる収容量の大きな病院が、医療から介護までを総合的に対応する大規模施設になることも十分に考えられます。ニーズを考えて、大病院が介護にも手を伸ばすようになれば、中小規模の病院よりも高待遇で働くチャンスも多くなるでしょう。
介護施設への看取り加算支援で医療職のニーズが高まる
・特別養護老人ホーム
・グループホーム
・特定施設入居者生活介護
といった介護施設内で看取りまで対応する場合、介護報酬の得点が加算されます。看取り加算という制度自体は2006年から制度化されていますが、高齢者の増加、施設内看取りの増加を踏まえて、入居者や入居者の家族にも自己負担が発生するようになったのが最大の違いです。
ただし、看取り加算支援の適用を受けるためには、
・常勤できる看護師の確保または24時間体制で病院・看護職員と連絡を取れる体制づくり
・看取りに関する職員研修の実施
・大部屋ではなく個室や静養室を用意すること
といった条件をクリアする必要があります。
看取り自体は病院でも可能ですし、医療施設ではターミナルケアを受けられますが、施設入居の高齢者にとって看取りのために住み慣れた環境から離れるのは大きなストレスです。病院でのターミナルケアは、どちらかというと医療処置がメインなので、本人のことを考えた看取りは今後増えていくでしょう。つまり、介護施設と連携して動くことのできる医療職のニーズも高まっていくということです。
大都市などの人口密集地では、医療と看護の連携状況に難のある中小の病院が経営を維持できなくなりつつあります。長期的に安定した雇用を確保したいなら、気になっている病院や介護施設だけでなく、その周辺にある医療・介護施設の充実度にも注目して転職先探しをするのがおすすめです。
認定看護師の働き方改革は時間外労働の上限規制など
医療・介護の必要性を受けて、看護業界ではより高度な医療技術の研修や、介護に必要なスキル・知識の研修が実施されています。また、看護師としてより自由に働き方を選べるように、労働時間の制限や有給の取得などが義務化されました。
基準を越えた時間外労働に罰則がつくようになった
労働基準法における法定労働時間は、原則1日8時間です。職員が1日に8時間以上働く場合、職場は36協定を結んで残業代を支払う必要があります。ただ、残業の規則を決める36協定は、もともと時間外労働時間の上限がありませんでした。過労死ラインを超えるような働き方をしていても企業側に罰則がないため、労働者側が泣き寝入りするケースも出ていたのです。
しかし、働き方改革が進められたことで、2019年4月から、時間外労働時間が最大「月間45時間・年間360時間」と上限が設けられました。例外として、医師など一部の職業では時間外労働の制限が延長されますが、上記の時間以上に認定看護師を労働させた場合、
・6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
・企業名の公表
といった処分が下されます。労働者にとってとくに大きな意味を持つのが、政府による企業名の公表です。36協定違反で企業名を公表されれば、いわゆるブラック企業であることが周知されることになります。病院などの医療機関や介護施設は、評判が悪化すると利用者や利益に大きな影響が出てくるため、企業側が利益を守るために36協定を守るようになることを期待できるのです。
また、36協定の変更点を知っておけば、仕事内容の公共性を盾にして、労働者に過酷な労働環境を求めてくる勤め先相手にも、堂々と残業代や一定以上の残業拒否を求められるようになるでしょう。
年10日以上の有給を付与する場合5日以上の有給取得が義務化された
医療・介護業界でも、2019年の4月以降、年間5日の有給取得が義務化されました。もともと、
・6ヶ月以上働いている
・実働日の80%以上出金している
労働者なら有給を取得できます。企業側は、「時季変更権」といって繁忙期を避けてもらうなど時期を振り替えることはできますが、原則有給の消化を拒否することはできません。
しかし、制度上有給の権利が確保されていても、実際の有給取得率が低い現実を受けて、正式に一定以上の有給取得が義務化されたのです。なお、年間5日以上の有給取得が義務化されるのは、年間10日以上有給を使える労働者だけであるという点には注意しましょう。
年間5日以上の有給を取得できなかった場合、使用者側は120万円以下の罰金刑に処せられるのもポイントです。ただ、義務化や罰則の強化が進んでいても、使用者側がきちんと理解しているとは限りません。転職をする場合は、面接で働き方改革について質問して、コンプライアンスの意識が低い職場を避けましょう。
医者の働き方改革は退院調整の加算など
時間外労働について定める36協定では、医師など一部の職業に関して、時間外労働の制限が大幅に緩和されています。しかし、緩和された制限にも限りはあるため、一人の医師へ過剰に負担を押し付けるような働き方は、今後減っていく可能性が高いです。
また、退院調整の加算や、医師の仕事を肩代わりする資格職の新設なども検討されています。
退院調整の加算で入院患者の負担が軽減する可能性がある
病院の負担を抑えるため、診療報酬の基準に「退院支援加算」が追加されました。入院日数を短縮すれば当直医師の負担も減りますし、ベッドが空けば緊急の患者も受け入れられるようになります。
フィジシャン・アシスタント資格の新設が検討されている
医師の監督下なら、投薬量の調整や手術の手伝いといった医療行為を実施できるのが、フィジシャン・アシスタントです。現状の看護師資格では、医療行為が大幅に制限されています。フィジシャン・アシスタント資格ができれば、医師、とくに外科医の負担は大幅に楽になるでしょう。
介護助手の働き方改革は給与の底上げや業務の効率化
長時間労働低賃金で知られる介護助手や介護福祉士の働き方改革は、
・消費税増税を財源とした給与の引き上げ
・ロボット・AIなどを導入による業務の効率化
・介護助手としてシニア世代の再雇用を推進
といった方法がメインです。介護業界の働き方改革には、政府による制度の変更だけでなく、民間企業の協力も必要になります。ただ、介護ロボットの開発にも政府は補助金を出しているので、とくに問題がなければ職員側の待遇も改善していくでしょう。
また、介護助手や介護福祉士も、一定以上働いている場合は36協定の対象です。給与や労働時間などの待遇がよくなれば、労働者側はより積極的に好条件の職場を探せるようになります。
認定看護師・医師・介護助手・介護福祉士は制度の改革に注意!
認定看護師、医師、介護助手、介護福祉士といった医療・介護業界も、長時間労働や給与面の待遇が改革されつつあります。ただ、働き方改革は進行中の施策ですし、スタッフを雇う側の準備も十分に整っているとはいえません。
制度の変更や需要の変更など、今後の話し合いなどによって内容が変わったり、新しく決まったりすることも多いです。よりよい職場への転職やキャリアアップを考えているなら、普段から政府の発表やニュースに注意を払っておくことをおすすめします。
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