介護コラム
2022年2月からの介護士の賃上げ制度とは?対象者や影響を解説
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2022年2月から介護士や保育士などを対象とした賃上げが行われます。賃上げが実施されることにより、1人あたり月額9,000円ほど交付されます。
賃上げの対象となる人にとってはとてもうれしい制度ですが、「私は対象になっているの?」「いくらくらい貰えるの?」と疑問を持つ人もいるでしょう。今回は、賃上げ制度の対象者や賃上げ制度によってどのような影響があるのかを解説します。
現在、介護士として働いている人、これから介護士として働きたいと考えている人はぜひ参考にしてみてください。
介護士の賃上げ制度とは
介護士の賃上げ制度とは、2021年11月19日に閣議決定された「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」に基づき、対象となる介護職の給与を引き上げる政策です。
介護職員処遇改善補助金の対象は、保育士等・幼稚園経論、介護・障害福祉職員。補助金の支給対象は、介護職員処遇改善加算されている事業所となり、介護施設以外で働くケアマネジャーや介護助手などは、介護職員処遇改善支援補助金の対象外です。
賃上げ制度の内容ですが、1人あたり1〜3%(4,000〜9,000円)程度で、収入の引き上げを行い、賃上げ分は基本給や固定手当として反映され調整されます。
月額9,000円の賃上げが行われれば、年額10万8,000円の賃上げとなるため、対象者の人には、とてもうれしい制度でしょう。
また正社員だけでなく、パート・アルバイトや契約職員などの非正規職員も賃上げの対象です。
下記で賃上げを行う理由と、介護職員処遇改善加算と特定処遇加算について詳しく解説します。
賃上げ制度の対象職種一覧
前述のとおり2022年2月から介護士、保育士などが賃上げ制度の対象です。
下記の表で賃上げ制度の対象となる職種と、それぞれの交付額を見ていきましょう。
賃上げ制度対象職種 | 介護、障害福祉職員 | 保育士、幼稚園教諭、 放課後支援職員など | 看護師・准看護師 保健師・助産師 |
---|---|---|---|
対象となる施設 | 処遇改善加算Ⅰ〜Ⅲの いずれかを取得している事業所 | 自治体、国の定めにより 運営している教育、保育施設 | 新型コロナウイルスに関する医療など 一定の役割を担当する医療機関 |
交付額 (平均) | 月額約9,000円 (収入の3%ほど) | 月額約9,000円 (収入の3%ほど) | 月額約4,000円 (収入の1%ほど) |
賃上げを行う理由とは
賃上げを行う理由としては、介護士を始めとする介護職は人材不足の解消、新型コロナウイルスによって起きた問題の克服・新時代開拓のための経済対策が理由として挙げられます。
「介護職の人材不足は、賃金水準の低さが原因ではないか」と考えられ、賃上げを行うことになりました。
またコロナ禍で介護職員が人材不足であることや、介護職員の離職がメディアなどでも挙げられ、各介護現場で大きなダメージを受けています。介護職は専門性を必要とし、これからの日本で高齢者が生活していく中でいなくてはならない存在です。
賃上げを行うことで介護士の給料に反映され、賃上げが実感できれば介護士の新規雇用、離職を防止するのではないかとされています。
参考:介護職員処遇改善加算とは
介護職員処遇改善加算は、人材不足対策の一つとして2012年から導入されています。介護施設などの利用者に介護を行う介護職員の安定的な処遇(扱い)改善のための賃金改善を実施する目的で導入された加算制度です。
介護職員処遇改善加算は5区分からなっており、各区分に設定されたⅠ〜Ⅲの要件を満たす必要があります。また加算額は、要件Ⅰ〜Ⅲに分類されており取り組みの内容、数はそれぞれ異なります。
要件Ⅰ〜Ⅲは以下の通りです。
Ⅰ職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備をすること
Ⅱ資質向上のための計画を策定して、研修の実施または研修の機会を設けること
Ⅲ経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期的に昇給を 判定する仕組みを設けること
参考:特定処遇加算とは
特定処遇加算は2019年に導入されました。介護職全体ではなく、勤務年数に加え技能がある介護職員のための賃上げ制度です。
「介護士は、長く働いていても収入のアップは難しい」と離職する人も少なくありません。
しかし介護士の技術や勤続年数を考慮し、賃上げを行うことで、給与面での不満から退職を考えている介護士の離職を防ぎ、必要な人材の確保と定着を進ることができるとされています。
賃上げによって介護士の給料はどれくらい影響を受けるのか
賃上げは事業所によって、補助金の額や交付率が異なります。
現行の介護職員処遇改善加算と同様に、各事業所に勤める介護職員数に応じて設定されている一律の交付率を、介護報酬に乗じるかたちで事業者に交付される仕組みです。
また補助額の3分の2は、介護士の賃上げに使うよう厚生労働省により定められています。
しかし補助金の分配は事業所が判断するため、補助金3分の1をどのように使用するかは事業者の裁量に委ねられています。
出典:介護職員処遇改善支援補助金について(報告)|厚生労働省
介護職員処遇改善支援補助金の交付率
介護職員処遇改善支援補助金は、各事業所の介護職員数に応じて交付率が異なると前述しました。
令和3年12月24日現在の案で決定している各事業所の交付率を、下記の表で確認してみましょう。
介護サービス区分 | 交付率 |
---|---|
訪問介護(夜間対応型訪問介護を含む) 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 2.1% |
認知症対応型通所介護※介護予防 | 2.1% |
認知症対応型共同生活介護※介護予防 | 2.0% |
小規模多機能型居宅介護※介護予防 看護小規模多機能型居宅介護 | 1.6% |
特定施設入居者生活介護※介護予防 地域密着型特定施設入居者生活介護 | 1.4% |
介護老人福祉施設 地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護 短期入所生活介護※介護予防 | 1.4% |
訪問入浴介護※介護予防 | 1.0% |
通所介護(地域密着型通所介護を含む) | 1.0% |
通所リハビリテーション※介護予防 | 0.9% |
介護老人保健施設 短期入所療養介護(老健)※介護予防 | 0.8% |
介護医療養型医療施設 短期入所療養介護(病院など)※介護予防 | 0.5% |
介護医療院 短期入所療養介護(医療院)※介護予防 | 0.5% |
参考:介護職員処遇改善支援補助金について(報告)|厚生労働省
介護士の賃上げは一時的?
令和3年12月24日時点では、介護職員処遇改善支援補助金の交付期間は2022年2月から2022年9月までとされています。
厚生労働省が発表している、「介護職員処遇改善支援補助金について(報告)」の資料によると、2022年9月の交付後10月以降も、今回の賃上げ制度と同じ水準を維持することが前提とされています。
しかし介護報酬など、国に定められている公定価格の見直しがない限り、2022年10月以降の継続的な賃上げは厳しい状況です。
賃上げを行ったところで、介護士の給与水準は全産業の平均賃金より、約50,000〜70,000円ほど低いです。介護職員改善支援補助金による賃上げを実感できるのか疑問が残ります。
したがって介護士としての給料アップを目指すのであれば、補助金があることを前提にするのではなく、資格取得などを検討する方がいいでしょう。
介護士として賃上げを狙うなら
厚生労働省の検討委員会では、経験・技能のある職員に対して他産業に匹敵する賃金水準を目指すこと、各職種の仕事内容に適正な種順まで賃金を上げ、必要な人材の確保を目標としています。
介護士として賃上げを狙うのであれば、資格取得を目指し、より専門的な知識や技術を身につけるといいでしょう。
各資格の2020年2月時点での平均給与、年収の概算を下記の表でまとめているので、参考にしてみてください。
資格名称 | 2020年2月の月額平均給与 | 年収概算 |
---|---|---|
資格なし | 27万5,920円 | 約331万円 |
初任者研修 | 30万1,210円 | 約361万円 |
実務者研修 | 30万3,230円 | 約364万円 |
介護福祉士 | 32万9,250円 | 約395万円 |
介護士の賃上げ制度によって、介護職員処遇改善支援補助金の支給が行われます。賃上げは、2022年2月から9月までの期間、介護施設で働く正規社員、非正規社員が賃上げの対象です。
2022年10月以降も賃上げ制度と同じ水準を維持することが前提とされており、介護職員の人材不足の解消が目的です。
しかし介護士の給料が大きくアップするとは限りません。確実な賃上げを狙うのであれば、資格取得などを検討した方が賢明でしょう。
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